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コンセプトノート

685. 組織をギュッと束ねるもの

危機が組織を結束させる

異業種の部長の方々が集う研修の場で、「危機によって組織の結束力が高まった経験はありますか」とおたずねすると、ほぼ確実に数本の手が挙がります。

社員の不祥事、商品のトラブル、自然災害など、組織の存立が危うくなるほどの危機に見舞われた。でもなぜか、その危機によって自然と結束力が高まった。結果として、平時にはできなかった変革が成し遂げられた。場がシンとするほどの深刻な状況からの復活のストーリーには他の人が学べるところも多いので、機会があればその時間を必ず設けるようにしています。

結束のドライバー

組織をギュッと束ねるのは、危機だけではありません。組織を結束させるもの、つまりドライバーにはどんな種類があるか、うかがった話や経験を思いかえして分類してみます:

  1. 【危機】 上述のような、降りかかってきた災難。危機からの脱出が共通の目標になる。
  2. 【競争】 競合組織との激しい競争。勝利が共通の目標になる。
  3. 【ハレ】 目標とその達成を祝う機会。目標達成が共通の目標になる。

この中で、組織のリーダーが使えるドライバーはどれか。

【危機】は、自ら招き寄せるわけにはいかないでしょう。いかないのですが、とても強いドライバーなので「危機感を持て」と言いたくなります。高い目標を掲げて危機感を演出するリーダーもいます。見透かされる結果になることが多いように感じますが。

【競争】は、シェア1位から陥落したというような、「危機」とまではいえないものの、同じように組織に危機感を持たせるイベントです。競争相手を特定して戦いを挑むことで結束を図るやり方を好むリーダーもいます。

ただ、これらのドライバーは、個人の心理でいえば情動を呼び起こすようなもの。人を瞬間的にドキッとさせることはできてもずっとドキドキさせることはできないように、危機だ競争だと言い続けていると、組織はやがて疲れ、反応しないことを学習してしまいます。

【ハレ】も、一年中お祭り状態を演出することはできません。ただ他の2つに比べると、小さく区切った「晴れ舞台」を用意するのは容易でしょう。ポジティブなドライバーなので有能感を育てて自発性が生まれることも期待できます。

わたしはほぼずっとプロジェクトベースの仕事をしてきています。印象的でうまくいったプロジェクトを振り返ってみると、たとえばプロトタイプ開発の完了といった区切りを見つけてイベントを企画してくれたマネジャーを思い出します。忘年会や新年会などの類いはつい「年末/年始だからってわざわざ集まらなくていいだろう」とおっくうに思ってしまうわたしも、その区切りまでの到達とお祝いの機会は、楽しみにしていました。

ハレの設計に必要なもの

となると、重要なのは巧みな目標を設定すること。良い目標の条件については様々な定義がありますが、今回は動機づけという観点から考えてみます。

島 義弘(編) 『パーソナリティと感情の心理学』(サイエンス社、2017年)によれば:

『ここ数十年の動機づけ研究で重視されているものには2つの要因があります。それは、期待と価値です。』

とのこと。具体的には次のような説明が付されていました。

  • 【期待(expectancy)】 行動結果が望ましいこととなるか否かの予測
  • 【価値(value)】 行動した結果に対する価値づけ

動機づけの2大要因*ListFreak

やればできそう(期待)で、結果として価値が得られる(価値)ならば、やりたいと動機づけられる。シンプルでわかりやすいですね。これらの要素に注目しつつ、次の話を聞いてみようと思います。