ミニレビュー
前袖(表紙の折り返し)を引用します。
本書では、組織で働く個人が、組織の理不尽な問題を前にして、自分を立てなおすための方法を提案します。それは、「問題をほぐす」というアプローチです。理不尽な問題をほぐすことによって、自分を立てなおし、理不尽な問題を抱えても、働き続けることができるようにする。それが本書の目的です。(本文より)
いくつか共感の持てるキーワードがありました。
まず「個人」。「まえがき」によれば『企業研修の形を活用して実施している』とあります。つまり著者は企業から報酬を得て仕事をしています。しかしその目線は、あくまでも個人に向けられています。弊社がまさにそうなのでよくわかるのですが、こういう立ち位置で仕事をするのは厳しいこともあります。なぜなら、スポンサーにはスポンサーの要求があり、それはしばしば組織内の個人の利害と一致しないからです。
次に「ほぐす」というアプローチ。たしかに、問題というのは絡まった状態としてそこにある、と思います。もちろん経営者の無為とか放置された組織体制とか、情移植者や組織の構造が生み出す問題もあります。一方で、自分もその一部でありながら組織を一方的に非難する矛盾とか、問題を指摘する個人に問題があることもあります。
「ほぐす」アプローチでは、そういった状態に対して分析的なアプローチを採らずに当事者の気持ちを語り合うことから始めます。「問題を問題と言っているだけでは、何も解決しない」と思われるかもしれませんが、そうでもないのですね。もちろん、売上が何%落ちたという事象そのものは変わりません。しかしその事象の解釈は、変わり得ます。問題解決というと、あたかも問題と対決するかのようなイメージがあります。しかし問題をほぐしていくと、問題と対決する前に解消してしまうこともあります。
本書では、問題のほぐし方を平易な言葉で解説していきます。プロフィールを拝見すると、コーチ養成機関の設立に参画されたとありますが、コーチングその他の輸入学問用語はほとんど出てきません。もちろん似た枠組みは採用されていますが、著者なりに落とし込まれた考えとして、ご自分の言葉で語られています。事例が豊富で、対話の場での写真があるところなども具体的なイメージが沸いていいですね。
(参考)
・対話相手のキーワードを拡げる4つの質問 – *ListFreak
・YES AND で相手の物語を進めるインタビューのコツ – *ListFreak