ミニレビュー
著者の本は『文章は接続詞で決まる』に続いて2冊目です。指名買いというよりは、本書を手に取ってから思い出しました。前の本は好著でしたので、今回も期待して読み、その期待は裏切られませんでした。
構成は論理的で、淡々としているという感じです。最初に読む技術の重要性が示され、読む技術が速読・精読・味読の3技術として定義され、それぞれの目的に応じて8つの読解ストラテジーを提案します。これが第一部。第二部以降は、それら8つの読解ストラテジーに1章ずつ費やして説明していきます。各章ごとにきちんとまとめが付いています。
例文の適切さが強く印象に残りました。伝えるべき内容に合わせた例文を自作する方がよほど楽だと思うのですが、ほとんどすべての例文は、新聞の社説やコラム、文学作品などからの縦横な引用によってまかなわれています。ペダンチックな言葉づかいではなく、こういうところから専門家ぶりが感じられるところに好感。
おそらくほとんどの読者は、本書で提案されているような読解ストラテジーを「無意識に、あるいは部分的には使っていたなあ」と感じられると思います。本書の価値は、新規さというよりは枠組みと内容の確かさにあります。
個人的には、書き手にとって有用な教科書だという印象を持ちました。どのように読まれたいかを意識すると、しぜんと文章の構成も決まってきそうです。
(参考)
- 【速読】話題ストラテジー ― 知識で理解を加速する力
- 【速読】取捨選択ストラテジー ― 要点を的確に見ぬく力
- 【味読】視覚化ストラテジー ― 映像を鮮明に思い描く力
- 【味読】予測ストラテジー ― 次の展開にドキドキする力
- 【味読】文脈ストラテジー ― 表現を滑らかに紡いで読む力
- 【精読】行間ストラテジー ― 隠れた意味を読み解く力
- 【精読】解釈ストラテジー ― 文に新たな価値を付与する力
- 【精読】記憶ストラテジー ― 情報を脳内に定着させる力
8つの読解ストラテジー – *ListFreak