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[新訳]自警

  • タイトル:[新訳]自警
  • 著者:新渡戸 稲造(著)、渡邊 毅(編集)、渡邊 毅(翻訳)
  • 出版社:PHP研究所
  • 出版日:2008-07-23

ミニレビュー

引用:

世界に日本人が誇れる名著『武士道』の著者・新渡戸稲造が懇切丁寧に書き記して、
大正・昭和初期のベストセラーとなった『自警』。
現在は『自警録』として知られ、知る人ぞ知る名著である。
本書は、その名著の現代語抄訳本である。
(Amazon.co.jpの「内容紹介」欄より」

図書館で見かけるまで、この本の存在を知りませんでした。恥ずかしいことに、と書くべきところでしょうが、「知る人ぞ知る」とのことなので、やはり知名度は低いのでしょう。

「自警」といういかめしいタイトルから察せられるとおり、生き方についての本であります。しかも著者は『武士道』の新渡戸稲造。身を清めて、正座して読まなければ……と思いきや、内容も文体も平明。安心して読み通せました。原文にあたってはいませんが、おそらくは現代口語訳+抄訳をされた渡邊 毅氏の手腕によるところも大きいでしょう。

著者のユーモアのセンスにも惹かれます。たとえば「世の中に譲っても差し支えないことが多いものだ」という見出しのついた文章から引きましょう。

引用:

意志という言葉は非常によく聞こえるけれども、何ごとについても明白な意志を発表する者は、神経質かあるいは小心な厄介者である。毎日三度食べるご飯でさえ、硬い軟らかいがある。この世を渡るとき、ご飯の炊き方についてあまりにも明白な意志を持っている者は、おそらく生涯の三分の二は、食事のために不満足を唱えて暮らさなければならないだろう。(p54)

最後の一文なんかいいですよね。伊丹十三にも同じような文章があって、これまではそちらを好んで引用していたのですが、今後はこちらで行こうかな。

そういうやわらかい一面を見せつつ、この次の見出しは「譲れないところはあくまで固守せよ」です。相手が譲ると見るや、調子に乗って溝の中に叩き込もうとするような輩には、「断然断って、あべこべに溝に叩き込むのが当然である」。

といった感じで、硬軟バランスの取れた処世の秘訣を論じています。

(参考)
自分への悪口に対して、慎むべき5つの行動 – *ListFreak

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