ミニレビュー
著者は筑波大学の名誉教授で、「バイオテクノロジーの世界的権威」(Amazon.co.jpの「商品の説明」欄から)
本のメッセージがよく現れている文章を抜き書きします。
引用:
こざかしい理屈や常識の枠を超える「大きな愚かさ」。鈍いけれども深い生き方。その復権が、いまこそ必要なのではないでしょうか。(p15)
目に見ることができて、(みかけは)合理的で、リスクの少ない(ように思える)道ばかり行くな、というメッセージには共感。しかし、粗っぽいところもあります。
たとえば、行き詰まった研究者が、「これを続ければ成功すると自分は信じるから」という理由で便所掃除を始めた、というエピソードが披露されます。著者は、この研究者に「圧倒されるし敬服もします」といい、理由をこう語ります。
「なぜなら、それほどの熱意、理性を超えたすごみさえ感じられる愚直な情熱には、神もたまらずセレンディピティを与えるはずだからです(p39)」
こういう理由付けで納得できる人は、そもそも本書を読むまでもなく著者の主張が会得できているでしょう。そうでない人は「愚直な情熱には、神もたまらずセレンディピティを与えるはず」というところで醒めてしまいそうです。サイエンティストならではのやり方で、「こざかしい理屈や常識の枠」をとっぱらって欲しかったなあというのが、率直な感想。
もちろん、そういう箇所ばかりではありません。ちょっと引用したくなるようないい話もたくさんありましたよ。