- タイトル:脳を鍛えるには運動しかない! 最新科学でわかった脳細胞の増やし方
- 著者:レイティ,ジョン J.(著)、ヘイガーマン,エリック(著)、Ratey,John J.(原著)、Hagerman,Eric(原著)、香方子, 野中(翻訳)
- 出版社:NHK出版
- 出版日:2009-03-20
ミニレビュー
●心拍計が欲しくなる
わたしが目指すのは、運動と脳をつなぐ驚きに満ちた科学をわかりやすい言葉で語り、それが人間の生活にどのような形で現れるかを示すことだ。そして、運動が認知能力と心の健康に強い影響力をもっているという認識を確かなものにしたい。運動は、ほとんどの精神の問題にとって最高の治療法なのだ。(序文より)
ハーバード大学医学部に勤めつつ開業医でもある著者が「脳を鍛えるには運動【しかない!】」と言っているわけではありません。しかし著者が一般人の運動軽視に強い危機感を持っているのはたしかで、その勢いが原題(“SPARK – The Revolutionary New Science of Exercise and the Brain”)にも、邦題にも現れている気がします。
そりゃ人間も動物だし、脳も臓器の一つであるからには、運動が脳に何の影響も及ぼさないと思っている人はいないでしょう。しかし、具体的に何がどこまで分かっているかをあまり知らずに来たわたしにとって、いいアップデートをもらいました。
運動が人間の認知と精神に及ぼす影響を、最近の研究成果を引用しながら解説しています。守備範囲の広さを示すために、目次を引用しておきます。
第1章 革命へようこそ―運動と脳に関するケーススタディ
第2章 学習―脳細胞を育てよう
第3章 ストレス―最大の障害
第4章 不安―パニックを避ける
第5章 うつ―気分をよくする
第6章 注意欠陥障害―注意散漫から脱け出す
第7章 依存症―セルフコントロールのしくみを再生する
第8章 ホルモンの変化―女性の脳に及ぼす影響
第9章 加齢―賢く老いる
第10章 鍛錬―脳を作る
運動しなきゃなあと思いつつなかなかできておらず、だれかに強烈に説得されたい人 −まさにわたしがそうなのですが− にとっては、いい本だと思います。興味の所在がどこにあれ、第10章に来るまでには、心拍計が欲しくなっているはず。
とにかく読者に最初の一歩を踏み出させるために全力を挙げているせいか、具体的な運動メニューなどはありません。とにかく、まずは少しでもいいから動くべし!というメッセージに満ちています。この明るく強い熱意のおかげもあって、350ページにせまる分量も苦になりませんでした。