カテゴリー
資料

定量分析実践講座―ケースで学ぶ意思決定の手法


ミニレビュー

化学専攻だったせいか、「定量分析」と聞くと厳密な分析を想像してしまいます。しかしビジネスにおける定量分析は、分からないことを出来るだけ数字に置き換えて分析しようというほどの意味合い。本書には、「エイヤ」で判断しがちな状況をどのようにモデル化し、どのように数字を作り、どのように意思決定の材料を見出していくかが分かりやすく学べるショートケースが並んでいます。

「定量」分析ですから数字は不可欠。とはいえ、数学的な操作を必要最小限に抑えて分析の肝を伝えようという著者の意図がとてもよく伝わってきました。分析手法を広く紹介する代わり、難しいものについては思い切って刈り込んでいます。例えば「ベイズの定理」については、それを説明する数式は一切ありません。何かの事象を予測したいとき、主観的にでも確率を付与してモデルを作っておけば、データを得ながら精度を高めていくことができるという説明だけがあります。実際、事業分析の現場でベイズ推定を意思決定に活用した事例などはまだ少ないと思いますので、そういう手法があって、今後普及するかもしれませんから注目ですよ、ということを知ってくれれば十分ということなのでしょう。

また16のケースが1つのシナリオ(主人公の「私」は脱サラ・帰郷してコンビニのフランチャイズ拡大に挑みます)に沿って書かれています。臨場感を保ちつつケース毎に覚えることを少なくできる、優れた方法です。

後半のいくつかのケースを除いては、実際に数字を追って分析手法を学べるだけの具体性もありますし、薄い本ながら索引も充実していて辞書的にも使えます。私を含めた多くのビジネスパーソンにとって「言葉は知っていたけれど使ったことがない」分析手法を試す、よい教本になるのではないでしょうか。

リスト (from *ListFreak)