ミニレビュー
■何をもって「ほんとう」の仕事術というのか。一読すれば「ほんとう」が指す特定の価値観は見て取れるが、それをタイトルに据えるのは煽りではないのか。
■『一言で言っておこう。あなた方は大きな問題を抱えている。(略)自分を差別化するためには、すべての分野に手を出すわけにはいかない。資源は有限なのだから、「これはやる。でもこれは捨てる」という”捨てる意思決定”がなければならない。』
と書いた同じページで
『…読者の期待を裏切りたくないという思いから、カバーする範囲はどんどん広くなっていった。盛り込まれているのは、仕事術、MBA的ビジネス・スキル、思考・発想法、そして自分の心のマネジメントの四つである』
と書いている。この本自身には”捨てる意思決定”があったのか。もし十分広いテーマをカバーしながらも差別化できる書籍が書けるなら、個人においてもそれは可能だということにならないか。
……実力派天邪鬼たれ、と書いてあったので天邪鬼なツッコミを入れてみました。ツッコミの浅さで実力が知れる?(笑)
世話人はネガティブな書評は載せない(そうせざるを得ない本は書評を書かない)ので、上記はあくまでもご愛敬ということで。
起-動線の読者にもファンが多いと推測される(巻末の謝辞リストで、それと分かる方が数名…)、山本真司さんの著書です。
ノウハウの充実といいメッセージの誠実といい、お得な本です。AllAboutの著者インタビュー兼ダイジェストのような記事が、購入の際の参考になると思います。
この本は読者に「自分の頭で考えること」を要求しています。
いまこそ、じっくりと沈思黙考し、自らの成長戦略に思いを馳せなければならない。では、どのようにして成長戦略を描くのか――本書では、あなたが自分の頭で考えるためのヒントを呈示していきたい。
情報発信者として明確なメッセージを出しつつ「自分の頭で考えること」を促す。これは難しいテーマです。「こう考えればいい」という方法論を示した瞬間、無批判な受け手はその枠に沿って考えます。つまり他者に依存します。これを強くやれば洗脳めいた話になり、「自分の頭で考えること」を促しているとは言えなくなります(参考:『「方法論」という罠』)。受け手(読み手)にはそのあたりを踏まえて読むことが求められているようです。
著者は団塊ジュニアの世代に『憐憫とともに愛情』を抱きつつ、こう確信しています。
いまの若者を救う道は一つしかない。自らの成長戦略を描く方法論を教えることである。
著者の立場からは団塊ジュニアは憐憫・愛情・救済の対象です。そしてかなり説得力のある「方法論」が展開されます。その内容には非常に共感しつつ、たとえば「ほんとうの」という形容詞にケチをつけたくなったのも、半ば冗談ですが、半ばそのような危うさを感じるからです。
著者が出し惜しみなく披露してくれる方法論をよく咀嚼しつつ、かつこれに依存しない。著者がいうように「ヒント」として活用する。そのようなスタンスで読むことが、著者の本意にも叶っているでしょう。