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マネジャーの仕事

  • タイトル:マネジャーの仕事
  • 著者:ヘンリー ミンツバーグ(著)、Mintzberg,Henry(原著)、哲史, 奥村(翻訳)、栄, 須貝(翻訳)
  • 出版社:白桃書房
  • 出版日:1993-08-26

ミニレビュー

経営かくあるべし、という本ではなく、経営者を含む管理職(Managerial Work)は実際にどんな仕事をしているのかを丹念に調べ上げた本。むりやり理論化せず分析に徹したことが古典の仲間入りを果たした理由でしょう。
原著は1973年(この本は1993年初版)ですから、電子メールも携帯電話も無かった時代。今よりは仕事も多少牧歌的かと思いきや、本質的には変わっていないようです。

マネジャーの仕事は短時間・多様・断片的

世の中の多くの仕事は、長期間かけて学び、専念することで成果を上げる、いわゆる専門特化を必要とします。マネジャーもある種専門職ですが、仕事の内容が多岐にわたり、時間的にも細切れであることに大きな特徴があります。

引用:

 筆者の調査でも、経営者は、毎日平均三六通の書類と一六の高等での接触があり、そのほとんど全部が別々の事柄を扱うものだった。

引用:

スチュワートは、日誌法で一六〇人のマネジャーを四週間にわたって研究した。その結果、このマネジャーたちが少なくとも三〇分間、中断されなかったのは、平均九回しかなかったという。

しかも、観察によれば、マネジャーはこのような中断の多い働き方を自ら選択しているというのです。その原因について著者のミンツバーグはこのように考察しています。

引用:

マネジャーは自分の時間に含まれる機会費用に対する感覚を鋭くする。つまり、こうせずにああしておけば、こんなメリットが得られたのに、といったことを敏感に察知するようになる。こうして、組織に対する自己の価値をはっきりと理解するようになるために、より多くの仕事を引き受けるようになる。

たしかに。自分自身を振り返っても、組織で働いていたときには、侵されざる専門領域を持ちたいと願う一方で、組織内で起きていることにはできるだけ関与しておきたいとも思っていました。

特ダネ願望

もう一つ面白かったのは、マネジャーに『新しい情報を強く求める態度を示し、逆に組織が与えてくれる多くの日常的な報告の類にはさしたる関心を示さないという傾向』があるという分析。

引用:

もっとも興味深かったのは、「インスタント・コミュニケーション」現象であり、一番新しい「ホット」な情報は、電話や予定外のミーティングで頻繁かつ非公式に流されていたことである。この種の情報は最優先で受信され、ときには会議が中断されることもあったし、秘書のチェック基準も簡単にパスして重役のオフィスに届くようになっていた。こうした「インスタント・コミュニケーション」によって、彼らが週間勤務予定を組み直したり、会議日程を変えたりすることもよくあった。

これも分かりますね。情報の流れをよくするために会議や報告などを定型化する一方で、具体的かつ非公式な情報もどんどん欲しいと思います。

マネジャー≠プランナー

マネジャーのこのような行動パターンは、大局を見据えて次の一手を打つような経営者像とはずいぶん違うことに気がつきます。

引用:

マネジャーの環境が生みだすプレッシャーは、古典的文献が語るような熟考型のプランナーを育てはしない。この職務は、適応型の情報操縦者を育て、彼らは進行中の具体的な状況を好むのである。マネジャーは刺激―反応という環境の中で仕事をしており、その仕事を通じて、即時的活動(ライブ・アクション)をはっきりと好むようになる。

個人的にはこのくだりに感じ入るものがありました。バリバリ仕事を「さばいている」陶酔感で終わってはイカンということですね。ビジョンを描いたりじっくりプランする時間も持たないと。

マネジャーの10の役割

マネジャーの地位と権限は、対人関係上のある役割を要求します。マネジャーはそれを果たすことで情報に関わる役割を果たすことになり、結果として意思決定者としての役割を果たすことができます。
著者はそのようなメカニズムを、3つのカテゴリと10の役割にまとめています。

◆対人関係に関わるもの
├フィギュアヘッド(地位が要求する役割)
├リーダー
└リエゾン
◆情報に関わるもの
├モニター
├周知伝達役
└スポークスマン
◆意思決定に関わるもの
├企業家
├障害処理者
├資源配分者
└交渉者