カテゴリー
資料

ニート―フリーターでもなく失業者でもなく


ミニレビュー

職に就いておらず、しかし求職中でもなく、学校に行っているわけでもない25歳未満の若者が40万人いるという指摘から本書は始まります。

「典型的」と思われるニートへのインタビューの後、本書の1/3以上を費やして紹介されるのが、兵庫県の「トライやる・ウィーク」という14歳の時点での就労体験教育。そして終盤では、ニート擁護論とまではいかないものの、世間の無視や決め付けに対して警鐘を鳴らします。

著者が想定していた読み手(ニートとその保護者に向けて書かれているようでもあり、ニートを知らない「大人」―20歳を過ぎたニートが大人でないというわけではありませんが―に向けているようでもある)や、主張(若年労働の問題への取り組みを幾つかピックアップしてレポートしているのか、特定の主張があるのか)がよく理解できなかったので、時間をおいて読みなおすことが必要なのかもしれません。とにかく仕事を通じて人生観を養う時期に、働かない・働けない人たちがこれほど多くいるという事実は事実でしょう。

本書でインタビューに答えている方は、「やりたいことが見つからないから」仕事をしない・職に就けないと言います。

反射的に「何もやらないではますます見つからないだろう」と反発したくなりますが、そういう自分も、いわゆる団塊の世代より上の方の就労観などをお聞きしていると、違和感を覚えることがあります。特に大きな企業にお勤めの(お勤めだった)方と話をしていると、企業から放り出されるとか企業が無くなるというリスクとは無縁だったのだなあと感じることがあります。そういう方に例えば「シャニムニ頑張っていれば報われるんだから、あまり悩まないほうがいいよ」と言われても納得しづらいものがあります。ことほどさように、働くということに対する感覚は世代によって、人によって違うのでしょう。

しかし、試してみないと学びも無い、行動してみないと発見も無いというのは、社会環境や世代を超えた真実だと信じます。
著者はニートに対する理解の浅い「大人」の大部分を批判しています。「彼らだって好きでニートになったのではない」と言います。
いや待てよ、著者がそう命名した瞬間から「ニート」が出現したのではないか、セグメントとして認知されたことで却って安住しやすくなったのではないか…いやいや、それはきっと不毛な屁理屈でしょう。
ともかく、いろいろ「試す」チャンスは与えたいし、我々も持ちたいですね。経済的に余裕があればニートになってじっくり考えたいという「大人」も、案外多いかもしれません が、「大人」がチャレンジを続けないでどうして後に続く世代が試す気になりましょう。