ミニレビュー
職業を自分で創る人もいる
タイトルの通りちょっと変わった職業、たとえば遺体美容師、恐竜掃除人、男子トイレサービス係(の女性)などの写真集。見開き2ページ単位でひとつの職業を、ユーモラスな紹介文とモノクロのポートレイトで紹介していきます。
ただ眺めていても楽しいんですが、起-動線的観点からすると、この中の何人かが自力で今の職を得ているところに惹かれました。
例えば赤ちゃんモデルの気を逸らさない「赤ちゃん調教師」。
すべてが始まったのは彼がキャスティング・エージェントとして働いていた、1960年代のことだった。1ダースものきらきらした目をした可愛らしい赤ちゃんをパンパースの宣伝写真のために送り出してから数時間後、ジョセフは、オムツをした12人をどうやってコントロールしたらいいのか教えてくれという、切迫したカメラマンからの電話を受けた。彼は手を貸しに駆けつけた。隠して彼の新しいキャリアは始まったのである。
あるいは「時計マイスター」。時計塔のてっぺんの大時計をメンテナンスするという仕事。この人は公務員の時代に6年間もボランティアで時計の管理を続け、ついにニューヨーク市から公式時計マイスターの称号を与えられたとか。
あるいは「犬の糞掃除」。これは『息子と過ごす時間を過ごすために編み出した』仕事だそうです。
奇商クラブ―顧客がいるところメシのタネあり
わたしの大好きなチェスタトンに「これまで存在しなかった新しい商売でメシを食っている」人しか入れない秘密クラブの話『奇商クラブ』というのがあります。
『奇商クラブ』はフィクションですがこの本は本物。およそ信じられないような商売でも、ちゃんと特定のニーズを満たしていることがわかります。
思い切って常識の枠を外して想像力を働かせれば、案外メシのタネは見つかるんじゃないか、そんな気にさせてくれる本です。
個人的に「奇商」大賞を差し上げるとすると、「女の子になりたいボーイズのための花嫁学校」の校長先生かな。
(参考)
“Nancy Rica Schiff Photography”
(著者のホームページ。モノクロの綺麗な写真が多数)