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人生を変える黄金のスピーチ〈上〉準備編―自信と勇気、魅力を引き出す「話し方」の極意


ミニレビュー

上下巻からなる本です。上巻を読んだところで整理を兼ねてまとめておきます。

スピーチの理想形としてなんとなく「当意即妙」に憧れていました。たま〜にいますよね。突然の指名を受けても「えっ、ぼ、僕ですか?」なんて動じることなく、すらすらとユーモアと含蓄に富んだ短いスピーチができる方が。

この本はそういうスピーチよりは演説や講義にやや近いところにターゲットがあるようです(原題は”Public Speaking”)。「人を動かす」ための語り方といってもいいでしょう。

そのためには十分に戦略を練り、準備を重ねること。「準備」といっても内容を覚えたり立ち居振る舞いの練習をしたりといったハウツー的な準備以上に、心の準備が重要だそうです。

引用:

 

一九一二年以来、私は年間約六千ものスピーチを聴き、批評してきたが、(略)その経験で最も深く心に刻み込まれたことは、スピーチをする前には準備が必要であること、そしてわかりやすく話せるもの、言わずにはいられないものをもっていなければならないということである。本当に伝えたいメッセージがあって、それを聞き手に伝えたいと心から思っている話し手には、知らず知らずのうちに引き寄せられてしまう。これがスピーチの秘訣の半分である。
(「準備こそが自信の原動力になる」)

テーマに熱意を感じるまで考え抜く。すると言葉にも確信がみなぎる。

引用:

 

真のスピーチの準備は、言葉を機械的に紙の上に書き出したり、文句を丸暗記することではない。本や新聞記事から借りてきたアイデアを述べるだけでもない。そんなものではない。それは、自分の心と人生を深く掘り下げることであり、本質的に自分自身のものである確信と熱意を前面に押し出すことである。自分のものでなければならないのだ。徹底的に掘り下げれば見つかるはずである。(略)スピーチで大切なことは冷たい言葉遣いではなく、言葉の裏にあるその人、その精神、その確信なのである。
(「最も重要なのは「自分自身であること」」)

ここまでやることが「準備」なんですね。ヤレヤレという気もしてきますが(笑)、同時にどこか気持ちの高ぶる文章でもあります。おそらくは、このように徹底的に準備をした結果、聴衆が喜んで聴いてくれるスピーチができたらさぞ嬉しいだろうなあというイメージを持たせてくれるからでしょう。デール・カーネギーの本はそういう前向きなトーンで溢れています。

…と言いつつ、「ハウツー的」なる内容もふんだんにあるのが嬉しいところ。実際、

引用:

 

「大切なのは何を話すかよりも、どう話すかである」とも言われるくらいである。
(略)
イギリス議会では古くから、「すべては話す内容ではなく、話し方にかかっている」と言われている。

などと言いながら、(スピーチの内容を憶えるための)記憶力を高めるコツや声の強弱・姿勢など、細かいテクニックなども教えてくれます。

これで「準備編」ですからね。下巻はどうなることやら。

#下巻「実践編」もミニ書評をアップしました。

(誰かが推薦してくださったと思うのですが、失念してしまいました…読みましたよ!)